今月の法話

臨床宗教師という役割

臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし)。
 まだ耳慣れない言葉かもしれませんが、一言でいうなら、臨床心理士の宗教者版です。東日本大震災の後、ご遺族の心の悩みを和らげる活動に宗教者が一定の貢献を行えたことから、東北大学がそのノウハウを体系化し、カリキュラムを作成して研修を行い、これまで約130名の臨床宗教師を認定しています。当山の住職もそのひとりです。 具体的には、ご遺族、余命宣告をされたご本人、そういった環境で働いている職員の方、等々と真摯に向き合って話を聞き(傾聴とおおます)、必要に応じて宗教的な話をして、相談者さまの心の安寧に少しでも寄与し、生きがいを見出すお手伝いをする。そんな役割です。
 あくまでも相談者のお悩みに応えることを目的とし、特定の宗教の布教は一切行わない、というコンセプトが貫かれています。私も現場での対話研修の中で、仮設住宅で暮らしておられるお年寄り、余命宣告をされて緩和ケア病棟に移られた患者さん、その患者さんのご家族やご友人等、さまざまな方とお話をさせていただきました。それぞれの方にはそれぞれのお悩みがあり、それをじっくりとお聴きし、それに対するお返事をすることで、 学ぶところはきわめて大でした。これまで檀信徒さまのみを対象に寺院運営を行ってきた宗教法人にとっては、檀信徒さまに限らずすべての方との接点を見出す端緒となりうる資格および活動であり、なによりも 「他者に施す」という仏教の根本理念を体現することにもつながると考えます。 私も、研修を終えてから4年。これまで緩和ケア病棟やサービス付き高齢者向け住宅に伺い、多くの皆様と話をさせていただきました。これからの宗教活動の中で、研修で学んだことを活かし、自分なりの味付けもくわえて、臨床宗教師として成長していきたいと考えています。

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