今月の法話

コスモポリタン


セルゲイ・ロズニツァという映画監督がいます。1964年、ベラルーシ生まれ、幼少期に一家でウクライナの首都キーウに移住し、モスクワの全ロシア映画大学で学び、今はベルリンに移住しています。



 その彼が、ロシアのウクライナへの侵攻行為に直接の批判を行わなかったヨーロッパ映画アカデミー(EFA) の弱腰を批判して  今年2月末にEFAを脱退しました。ところが彼は、さらに3月初めには、世界の映画団体にロシア映画ボイコットを求めてきたウクライナ映画アカデミー(UFA)を批判したことにより、今度はUFAから追放されました。


つまり彼は、国としてのロシアは批判するものの、ロシアの人々にその責を負わせることは間違っている、と語っているわけです。ロシア国内にもさまざまな視点で映画を制作している関係者がおり、彼らの発表の場を奪ってはならない、という考え方です。彼は自らをコスモポリタン(世界市民)と称しています。どこかの国の民である前に、この世界に生きる者であると。きわめて示唆に富む視点です。


「国」を過度に意識して生きることは、その枠外に生きる人への攻撃につながりがちです。わが国でも、ロシアとのハーフである子供が学校で仲間外れにされる、などの行為が報道されています。決してあってはならないことです。我々も、ウクライナの人も、ロシアの人も、縁あってこの星に同時に生きています。いま一度その視点に立ち返って、今すべきことはなにか、できることはなにか、を考えてみたいと思います。





 


 


 


 


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