今月の法話

「空海 KŪKAI ― 密教のルーツとマンダラ世界」


先日奈良国立博物館の「空海 KŪKAI ― 密教のルーツとマンダラ世界」に行ってまいりました。 密教の深淵なる歴史とエナジーを全身で浴び、この脈々たる歴史を刻んできた密教の末端に僧侶として自分が置かれている事実に改めて身震いしました。


極めてシンプルに申し上げると、マンダラとは「密教の教えを図に示したもの」です。
そこには、真言宗において最高位の仏とされる「大日如来」を中心に膨大な数の仏が描かれており、その教えも簡単に説明できるようなレベルのものではありません。それでも今回展示されていた以下の3体は特にそれぞれ凄まじい威容を備え、見る者を圧倒するオーラを放っていました。


・血曼荼羅(金剛峯寺所蔵。平清盛が自らの頭部の血を画具に混ぜて大日如来の宝冠部に塗ったと言われています)
・高雄曼荼羅(弘法大師がプロデュースした曼荼羅で、唯一現存するもの。高雄神護寺所蔵。昨年230年ぶりの修復が行われました)
・両界曼荼羅(西院曼荼羅)(現存最古の彩色両界曼荼羅と言われる。日本の仏画とは違う造形感覚が印象的で、唐での制作と考える見方もあります。東寺蔵)



特に高雄曼荼羅については、天長年間に淳和天皇の御願により、空海請来の両界曼荼羅に基づき、新たに紫綾に金銀混じりの泥を用いて描かれ、神護寺に納められました。常に時の権力者たちによって尊崇され、平安時代後期には、仁和寺から蓮華王院の宝蔵そして高野山へと移動を繰り返し、その後神護寺に返還された、という歴史を持っています。いわゆる彩色の絵画と異なり派手さはありませんが、それだけにかえって歴史と重みを感じさせ、眩暈すらするほどでした。筆者(住職)が拝見したのは胎蔵界曼荼羅ですが、会期の後半は金剛界曼荼羅が展示される予定です。



 


密教は浄土系や禅宗の仏教と異なり、積極的に民衆に分け入って「とりあえず念仏を唱えましょう」と説くようなシンプルな教えでもないため、とっつきにくい印象を持たれがちです。ですが今回は十分にハードルを下げ、幅広い層に満足していただける展示になっていたと感じました。
このような関係者の方々の努力が、真言密教への理解を深めることに寄与するよう、切に願います。


 


 


 


 


 


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