今月の法話

諸行無常


「新型コロナウイルス」という、見えない敵の猛威に世界中が巻き込まれています。わが国でも、会社や学校に行く、買い物に行く、スポーツをする、映画やコンサートに出かける。そんな普通の日常を送ることすら困難を覚える日々が続いています。人々の心も次第に疲弊し、ささくれ立っているように感じます。
こういったときに、宗教者は本来、積極的に行動して、人々の心の安寧を保つお手伝いをしなければならない。筆者はそんな風に考えています。
しかしながら、現状、「仏教的なお話に悠長に耳を傾けている余裕などない」という方も多いのではないでしょうか。あるいは、「僧侶の話を至近距離で直接聞いて感染したらどうするのか」と思われている方もおられるかもしれません。実際に、ご葬儀の場で参列者の方が感染した例も報告されています。
涅槃経という経典の中に、「諸行無常(しょぎょうむじょう)」という言葉があります。万物はすべて移りゆくもので、いつまでもその姿を保っていられるものではない、(だからこそ、物事に執着するな)というほどの意味です。
近年、AI(人工知能)をはじめとするIT(情報工学)の飛躍的な進展により、それまで我々がしていたことの多くをコンピューターが代行してくれるようになりました。自分たちの国で開かれる五輪についてもこの国の多くの人々は歓迎し、その日が来るのを楽しみにしていた。
我々はつい数か月前まで、そんな「元気と希望にあふれた時代」を謳歌していたはずです。そんな時が、まさに「常ならず」であった、という事実を、我々は今、身をもって感じています。新たな元号を抱いて始めた迎えた今年の年初に、いったい誰が、今の状況を想像しえたでしょうか。
しかしながら、諸行無常。疫病が猛威を振るう季節も、いつまでも続くわけではありません。世界中の人々の叡智と努力により、根絶は難しいまでも、いつか特効薬が発明され、必要な人に施され、ウイルスとも穏和に共存できる時期が来ることと思います。
まだまだ深刻な状況は続きますが、仏教には「忍辱(にんにく)」という修行があります。何が起きても動じず、耐え忍ぶ、というほどの意味です。
私たちひとりひとりが、信頼できる情報をしっかり収集し、ご自身やご家族のみならず、この星に暮らす全ての人の立場にもなって、すべきこと、すべきでないことをきちんと理解したうえで、耐えるべきことは耐え、力を合わせてこの難局をしのいでいきましょう。
一日も早く、平穏な日々が戻ってまいりますように。





















 


















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