今月の法話

山川草木悉皆成仏


新春のお喜びを申し上げます。疫病は依然として猛威を振るっております。世相としては、例年と大きく様変わりしたお正月だったように思います。





しかしながら、当山には例年同様に大勢の檀信徒さんがお見えになり、普段のお正月と変わりなく、なごやかに、あるいは淡々と、お花やお線香をお墓にお供えになり、手を合わせておられました。もちろん、ほかのお檀家さんとマスク越しに小さな声でご挨拶を交わされ、適切な距離を取り、通路を譲り合ってのお墓参りをされておられました。





国や自治体から要請された決まりをしっかりと守り、ご自身のみならず周囲に迷惑をかけぬことを最優先にして行動する。まさに仏教でいう「利他行(りたぎょう)」を、皆様が実践しておられました。
そして結局のところ、ご先祖様との関わり合いは疫病の流行とは関係なく、いやむしろ、このような世相であるからこそ、檀信徒様とご先祖様との距離はむしろ縮まっているようにも思えました。





「皆で力を合わせてウイルスに打ち勝とう」などといった勇ましいフレーズも時折見聞きされますが、そもそも制圧しようなどと思うべきではないのではないか。仮にワクチンが普及して感染者が減少したとしても、また別のウイルスが発生するかもしれない。そしてそれは、世界を飛び回る人々によって、瞬く間に広まるかもしれない。そう考えると、やがて確立されるであろう「新しい生活様式」は、疫病の流行前とは違うスタイルになることを余儀なくされる、またそうでなくてはならない。





そのスタイルは具体的には見えておりませんが、漠然と「効率第一主義からの脱却」「自然との共生」といったキーワードが浮かんできます。我々人間は、この星の支配者でもなんでもない、数多ある生物のひとつにすぎない。それを絶えず心に留めて、これからの暮らし方を組み立てていく。そんなことが求められるのではないでしょうか。





山川草木悉皆成仏 (さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)





眼に見えないものを含め、この世に存在するすべてのものが、私たちを本来の姿に立ち返らせようとして、間断なく働き続けている、という意味で、存在するすべてに仏性が宿るという考え方です。示唆に富む仏教語であると、つくづく思います。


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